フェアトレードからコミュニティトレードへ

シャピイ

手漉き紙製品の生産者

手漉き紙製品は、フィリピン ミンダナオ島の生産者団体シャピイから届きます。島に産業を興し雇用を創出しようとはじまったシャピイは、人と人とのつながりを大切に、信念を持って取り組んでいます。


シャピイのはじまり

創業者のロレッタさんとレイナルドさん

1987年、フィリピン、ミンダナオ島。産業といえばわずかな規模の漁業しかない海辺の町。なんとか一家の家計を支えようと、父親や若い人が働き口を求めてどんどん都会へ流出してしまう、家族がばらばらに暮らさなくてはならない状況でした。

シャピイの代表ロレッタさんは、ご主人のレイナルドさんと共に、フィリピン政府が行う手漉き紙づくりのセミナーを偶然見かけました。これにピンときた夫婦は、その手漉き紙セミナーを自分たちの村で開いてもらえるように働きかけ、手漉き紙をこの島の産業にしようと思い立ちました。

しかし事業をスタートしてすぐぶつかったのが、資金と技術の問題でした。そこで、ロレッタさんたちは、大変ユニークな方法を思いつき、資金集めに成功します。それは、合法のくじを安価で販売する(当選者には賞品が当たる)もので、このくじお金の使途をあらかじめ明記して販売したところ、村民の約十分の一の人たちが購入してくれましたからでした。

シャピィ生産者紹介

ミンダナオ島の風景

地域を巻き込んだ資金集めで、うまくいったかのように見えた紙作りですが、出来上がった紙はごつごつとして厚みがあり、とても売れるような代物ではありませんでした。

それから4年後、当時の私達、第3世界ショップがシャピイに出会った時に作られていた紙は分厚く、コゴン草の繊維ががざらざらしてペンが走らないような状況でした。その後、第3世界ショップ基金を通じ、日本での紙漉き技術研修、機材の提供を受け専門家をミンダナオ島に招き、生産性と品質向上のプロジェクトに取り組んできました。

日本や欧米の顧客のニーズにこたえるべく常に研究し現在も品質向上や品質管理、生産性向上にチャレンジし続けた結果、シャピイの紙は、品質、生産性とも格段によくなり、紙の厚さや色のバリエーションも増えました。

当初の紙の主原料だったコゴン草以外にも、マニラナップルの葉、バナナの葉、雁皮(サラゴ)など、原料の幅も広がっています。

ビジネスは人と人との関係

シャピィ生産者紹介

満面の笑顔のワーカーの女性

5人で始めたシャピイは、現在多い時で400人ほどの人たちに仕事を提供するほどまでに大きくなりました。

「シャピイは私たちの想像を超えて大きく成長しました。しかし成長は責任を伴います。最初は、女性たちが家計の足しになれば、くらいのつもりでしたが、今は家庭の主たる収入源となりました」とロレッタさん。

フィリピン政府からも優良企業のモデルとして表彰され、採用の申し込みが後を絶たない、村一番の大事業となっています。これだけの成功をおさめることができた秘密は、シャピイ内の個人同士の関わりです。

ロレッタさん曰く「私たちにとって、ビジネスとは何にも増して、個人との関係性なのです。ただ人間であること、それが私のやり方なんです。」そんなシャピイの働く人への細かな配慮は、様々な形となって具体化されています。

シャピィ生産者紹介

SHAPII財団が運営する無料の図書館

例えば、教育を十分に受けられなかったシャピイのワーカーが自信を持って働けるよう、教育プログラムや図書館等を設置しています。

ワーカーだけでなくこの地域の人に向けた奨学金制度(フィリピンではSHAPII財団と呼ばれています)もあり、第3世界ショップでも販売した手漉き紙製品の売上の一部をこの奨学金に充てていました。第3世界ショップではこれまで10数名への奨学金スポンサーになっています。

2000年には、長年あたためていた協同組合のアイデアも実現されました。この組合で力を入れているのは、お金ではなくお米を借りられるローンや緊急時のローンです。

また、最近では政府の補助金を得た養豚プロジェクト、民間の農業関係の企業と協力した養鶏プロジェクトをスタートさせ、12匹の豚と鶏を飼い始めました。なぜ、活動を多角化するのかを聞いたところ「すべては、万一紙づくりの仕事が立ち行かなくなったとき、ワーカーの家計の足しにするためです。」との答えが返ってきました。

事業は継続的な成長

シャピィ生産者紹介

シャピイの現代表ニールさん

コゴン草から手漉き紙をつくる生産者とはいえ、シャピイが本当の意味でのビジネスグループへと転換する道のりは楽ではありませんでした。

チャリティ組織のような運営をしていては存続できないと気がついたとき、ロレッタさんは変わる勇気を持ち、問題解決のために行動し、人々へ働きかけました。

設立当初、村には電線が引かれておらず、道も整備されていないなど基本的なインフラが不足していました。田舎特有の気質として、頑固、無関心、世間知らずなどのメンタリティーの問題に悩まされました。

「私たちは、自ら学び、継続し、問題を犯しながらも、それらを克服し、様々な不足や不備にも関わらず自分たちの目標と理想を辛抱強く追い求めました」とロレッタさんは言います。

困難を乗り越え、続けること。その鍵はなんですかと質問すると、こんな答えが返ってきました。

「おそらくそれは、信念を持つこと、最善を祈ること、そして働いてくれる人たちと経営側での理解と調和的な関係だと思います。」

シャピイでは定期的に、働く人が、ロレッタさんをはじめ、マネージャークラスに対して評価することも行われています。また、もっと賃金を上げて欲しいという要望にも答えられないとき、経営データを開示し、状況と原因をきちんと説明します。

こうした風通しのよさや働く人を大切にしているという気持ちがきちんと伝わり、よい関係が築かれていると感じます。現在、経営は息子のニールさんに引き継がれています。シャピイの挑戦はまだ続きます。