子供たちの成長を感じる喜び
お菓子教室&食育コミュニティキッチンスタジオ
「
横浜ミサリングファクトリー」 松本美佐さん
今回、ご紹介するのは横浜市港南区で主に子供たちを対象にしたお菓子教室と焼き菓子販売の「ミサリングファクトリー」を開業した松本さんです。松本さんは「社会に役立つことを始めよう」とWWB/ジャパンの起業セミナー卒業生・起業家が知恵を持ち寄り、スリランカの雑穀・クラッカン(食事制限がある糖尿病に良いといわれている)を使った料理を開発する「クラッカンプロジェクト」に参加。この中で松本さんが提供してくださったレシピを元に、大阪の福祉作業所で作られ、今では第3世界ショップの人気商品となっているのが「クラッカンバー」です。今回はお話をお聞きする前に、お菓子教室の様子も見させていただきました。
●こどもお菓子教室「キッズファクトリー」スタート
松本さんは子供の頃からお菓子作りが大好きで、子供の頃はケーキ屋さんになるのが夢でした。大人になっても食に携わる仕事をしていましたが、単発で子供にお菓子作りを教えるイベントはあるけれども、継続して教えるお菓子教室が無いことを知り、また、ずっと続けられる仕事をしたいと思っていたこともあり、2002年7月、こどもお菓子教室「キッズファクトリー」を開催しました。
最初は地区センターで土曜日に教室を開催していたのですが、時間の制約や、備え付けの設備では松本さんがやりたいレッスンができないこと、人数が増えると材料・器具の搬入出が重労働だったりと、徐々に松本さんにかかる負担が大きくなってきました。教室の内容に見合うだけの会費が取れていなかったこともあり、松本さんは「なんとかこれを事業化できないか?」と考えるようになります。
松本さんは自分がお菓子教室で開業するとは思っていなかったそうですが、WWB/ジャパンの起業セミナーを受けて、開業についてのイメージをつかみ、また、社会性があるならどんどんやって良いのだという想いに至り、今年5月、お菓子教室と焼き菓子販売の店「ミサリングファクトリー」を開業しました。
子供向けの教室の他に、大人を対象にした教室とお菓子の販売をすることで、お店を維持していく目処が立ちました。大人を教えるにあたって、松本さんは競合する他のお菓子教室とは一線を画したいと、本格的にフランス菓子を学ぶため「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」に2年間通い、技術を身につけました。「キッズファクトリー」の会費もそれまで通ってきた子供たちでも通えながら、ぎりぎり採算も取れるように見直したので、会費が高くなってしまいましたが、松本さんの趣旨を理解して、大半の方がそのまま通っています。
松本さんは発信も大事にしていて、ホームページも充実させています。今までは、ホームページを通じて遠方から通ってくる方が多かったのですが、地域の情報誌などでも宣伝したこともあり、地元のお菓子好きが集まる場にもなりつつあるそうです。
●子供に状況を判断させる
取材のため、キッズファクトリーの教室を見学させていただきました。小学校低学年から高学年まで、年齢や相性などを見ながら、2人1組のチームに分け、松本さんのデモンストレーションを見てから、自分たちで実際に作るという作業を数回繰り返して、お菓子が完成していきます。まだ背の小さい子が牛乳パックで作った踏み台を使って作業台に向かう姿はほほえましいです。今回作るのは型抜きしたクッキーにチョコレートをサンドしたお菓子でしたが、大人よりも手数が多く体温の高い子供がいじりまわしても生地が傷まないように、松本さんが特別に配合したレシピを使っています。
お菓子作りの合間には自分たちで使った器具を洗ったりします。器具を洗剤で洗う、すすぐ、拭く、作業台を掃除する、使ったふきんを洗う係に分かれて行います。
この時、松本さんは決して個人に対して指示を出すことはありませんでした。洗った器具を拭く人がいない時でも「誰か手が空いている人は拭く係になって」と、言うだけです。なかなか子供たちだけで決められなくても「○○ちゃんやって」と、松本さんがその場を仕切ることはありませんでした。名前を呼んで、その子にやらせるのは簡単です。しかし、小さなことでも常に指示を受けている子供と、自分で判断して決めていく子供では、積み重ねていくと大きな違いが生まれるのだろうと思いました。
●お菓子作りを通して身につける精神
教えるというのは自分が深く理解しないとできないことですし、ましてや相手が子供だと平易な言葉にも注意するなど、大変さが増します。そういった大変さがあっても、できなかったことができるようになったことを見る喜びがあったり、自分が良いと思って言ったことを子供たちが実際にやってくれる嬉しさがあるそうです。なにより、子供たちの笑顔を見ると「頑張ろう!」という気持ちが湧いてくると笑顔で教えてくれました。
食品用ラップフィルムでクッキー生地を包むとき、何も言わないと必要以上に大きく切ってしまうので、「包めるだけの大きさにしてね」と言ってデモンストレーションをすると、子供たちもそれに習っていました。他にも、生地をまとめたときに使ったボールについた生地もきれいにとって使い切ること、バターなどの油分をつけたままの器具を大量の洗剤を使って洗うのではなく、Tシャツを着古したのを小さく切った布でぬぐってから、少量の洗剤で洗うことなどを教えていました。
このように、松本さんの教室では、お菓子の作り方を教え、技術を上げさせるだけではなく、お菓子作りを通じて、環境やもったいない精神など色々なことに目を向けさせ、自主性など人間的な成長を手助けしているのだと感じました。
9月には以前から開催を検討していた障がいのある子供たち向けの教室も、知り合いの紹介で実現しました。さらに、10月7日には横浜で、農家の門倉麻紀子さん(昨年のスクール実践コース卒業生)と一緒に食育体験のイベントも企画中。都会でお菓子を作りながら農業や食、環境の大切さを学べるコミュニティ作りへと松本さんの活動はますます広がっていき、ここに通う子供たちがどんな大人に成長するのか楽しみです。
(まとめ:WWB/ジャパン 網倉珠代)
【お菓子教室&食育コミュニティ
キッチンスタジオ 横浜ミサリングファクトリーHP】
http://misaling.net/
松本さんとWWB/ジャパンが共同で開発した『クラッカンバー』はスリランカの雑穀クラッカン(シコクビエ)を使って作った、第3世界ショップで大人気のお菓子。いよかんピールがふわっと香り、一度食べると病みつきになります。糖尿病にも良いと言い伝えられるクラッカンは、食物繊維も豊富で、カロリーが気になる方もおいしくいただけます。大阪の福祉作業所で作られていて、作る人も食べる人も嬉しいお菓子なのです。
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